新しいADHD治療薬-アトモキセチン-

IP08_B11.JPG アトモキセチン(商品名:ストラテラ)は、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)といわれるものでノルアドレナリンのトランスポーターを塞ぐことで再取り込みを抑制します。ADHDに関連の深い前頭前野には、ドパミンの再取り込み口(トランスポーター)がほとんど存在しないため、ドパミンも、ノルアドレナリンのトランスポーターより再取り込みが行われます。その理由から、アトモキセチン(商品名:ストラテラ)によって、結果的に前頭前野ではノルアドレナリン・ドパミン共に濃度が高まります。それによって、メチルフェニデェート(コンサータ)と同じようにADHDの症状の改善を示します。脳の他の部位ではドパミン濃度を増やさないので、依存や多幸など精神的な副作用を起こしにくいという利点もあります。

ノルアドレナリンの再取り込みにしか作用しないことから「NRI」と呼ばれています。類似の薬としてブプロピオンやマプロチリンがあります。マプロチリンはルジオミールという名で日本でも発売されています。また、ノリトリプチリン(商品名ノリトレン)もノルアドレナリン再取り込み作用が強いことから、有効な場合があります。ノリトレンとルジオミールを最大量まで使って、ADHD症状が軽快した成人例の報告があります。

ADHDの薬物治療 コンサータ-その有効性と問題点-

IP08_B15.JPG ADHDの治療薬の代表は、中枢神経刺激薬メチルフェニデェート(商品名:コンサータ)です。これ
は、ADHDの症状である多動性・衝動性・不注意さのすべてに効果を現すと考えられていますメチルフェニデェート(コンサータ)の作用機序は、ノルアドレナリンおよびドパミンの再取り込みを抑制し、なおかつドパミンの放出を促進するというものです。有効性は約80%で、残りの20%には無効ということであることははっきりしています。。コンサータを内服し始めても、学校での問題行動があまり変わらないという相談が良くあるのはこのためです。そのため、当院では薬の効果を判定するために、内服後にもう一度、遂行持続検査(CPT)を施行し客観性を持って対応するようにしています。
また、コンサータの副作用は、「食欲低下」「寝つきが悪くなるという睡眠障害」が主ですが、時として頭痛、腹痛という訴えもあります。また、チックも悪化させることが多いです。薬の調整は、保護者の方と医師とが適切な情報交換が重要になってきます。その意味でも、信頼できる専門医にかかることが何よりです。

パニック発作への不安をどうすれば?-認知行動療法-

相談
 現在、パニック障害と診断され、薬物療法を受けています。半年前、スーパーで買い物中に突然動悸がして、呼吸が苦しくなってしまいました。それ以来、そのスーパーに向かって歩いていると動悸がしてきてスーパーまでたどり着くことが難しくなってしまいました。近所で一番近いスーパーなのでまた行けるようになりたいのですが。

お返事

CHNU004.gif 突然そのような発作に襲われ、行きたいところにも行けなくなってしまうのはとても不本意な状況ですね。当院では、服薬以外にも相談員が、日常生活上で病気のために困ってしまったささいなことなどのご相談を受けています。今回のご相談は近所のスーパーにもう一度行きたいということですが、まず、病気を正しく理解し、スーパーに行こうとすると発作が起きてしまのではないかという誤った認知があることを自覚した上で、例えば、「スーパーまでのいつものルートで、最初はスーパーまでたどりつけなくても、徐々に歩く距離を増やしてみよう」または「いつも歩いているのとは違うルートを使ってみよう」など、患者様と一緒に問題を話し合い、できそうな対処法を探していきます。生活の中でこれらの工夫をすることで、発作や不安は解消されていくことが多いです。生活の問題なので医師には話せない内容だと決め付けずに、一緒に考えていきましょう。また、すぐにできるものではないので、焦らず少しずつやっていきましょう。

ADHDの診断をするには?

IP08_B20.JPG ADHDの診断基準は「不注意、および/または多動性-衝動性の持続的な様式で、同程度の発達にある者と比べてより頻繁にみられ、より重症である。これらの症状のいくつかは7歳以前から存在
し、また、学校や家庭など少なくとも2つ以上の状況で存在する」と定義されています。落ち着きがない注意力の欠如予期せず行動を取るを基本症状とする行動障害で、その行動により社会的な活動や学業の機能に支障を来す疾患です。
しかし、そのような行動があれば、即、ADHDの診断が出るかと言えばそうではありません。このような行動異常は、他の精神疾患でも身体・神経疾患でも現れることがあります。また、治療薬のコンサータを使う場合、その副作用のことも考えなければいけません。そのために、ADHDの診断には、以下のような手続きを行います。

①初診時:診察で今までの状況の確認、チェックリスト(ADHD評価スケール、子どもの行動評価スケールCBCL)の記入、コンピューターによる注意力持続テストCPT検査採血
②2回目の診察まで:担任教師にチェックリストを記入してもらい学校で様子を確認
③2回目以降:心理検査で知能面・学習面の評価
④医学的検査:脳波検査・頭部MRI検査→脳の変性疾患など器質的疾患の鑑別

以上のような手続きを経て、ADHDの診断を行い、ADHDであると包括的にいえることができた場合は、コンサータなどの薬物療法や親御さんへの対応訓練(ペアレント・トレーニング)などを行っていきます。

チック~治療とその後の経過~

子どもにチックがあっても、心配しすぎてはいけません。多くの子ども(男児は4人に1人、女児は10人に1人)が、子ども時代のどこかでチックを発症します。軽度のチックは全く問題はなく、心配する必要はありません。ただし、チックが治らずに子どもが生活しにくくなるようなことがあれば、その時は心配するべきです。
CHLI006.gif チック障害の場合、最初のチックは単純で頻発することはありません。進行するにつれて、チックの症状は頻発するようになります。最終的には、他のチックも加わり、重症化すれば運動チックと音声チックの両方が出現します。チックが1ヶ月以上続いて、学校および家庭での生活や友達つきあいに支障を来すようになったら、子どもの心療内科・精神科に相談するべきでしょう。
チック障害の大半(およそ3分に2)が青年期になると治ります。一部は進行して何年も、あるいは何十年も続く中等症あるいは重症の障害になります。一生続くチック障害でも症状が消失する時期があり、数ヶ月続けて症状がみられなくなることもあります。
チック障害が一生続くことは比較的稀ですが、チックを抱えて生きてゆくのはとても大変なことです。チック障害のある患者は屈辱感と低い自尊心を抱きやすく、友人関係が築けずに、孤独な生活を送っています。重度のチック障害がある人は就職が難しく、ある研究によれば、半数が仕事に就いていません。音声チックを抱えて生活することは困難なものです。音声チックのある人は理由もなくぶつぶつ言ったり、うなり声を上げたりします。職場や友達といるときでも、いきなり罵声を発することがあります。
子どものチック障害があるからといって、決して絶望してはいけません。治療に症状は緩和し、子どもは落ち着いた生活を手に入れることができます。また、中等度や重症のチック障害を抱えた多くの人が、医学・法律・スポーツ・ビジネス・コンピューターサイエンスなどの様々な分野で成功しています。効果的な治療を受けるとともに、障害が生活に及ぼす影響を小さくして、障害と共に生きることを学んで成功しています。

アスペルガーとはどんな人物だったのか?

「アスペっぽい」「アスペくさい」という言葉を良く耳にするようになりましたが、言動が不自然な児童や青年が診断学的手続き無しに「アスペルガー症候群」という病名で話題に上ることが少なくありません。1981年にウイング(Wing)によって大きく取り上げられた「アスペルガー症候群」は、元々は1944年にハンス・アスペルガーが論文「自閉性精神病質」が土台になっています。そして、1992年に正式に発刊したICD-10(国際的疾患分類)に初めてこの症候群ははっきりとした形で現れます。まだ、20年もたっていないうちにこれほどまでの市民権を得てしまいました。では、ハンス・アスペルガーとはどんな人だったのでしょうか?
074-h-asperger-2.jpg ハンス・アスペルガーは、1906年オーストリア・ハンガリー帝国で生まれ、ウィーンで育っています。ウィーン大学病院で小児科医として働いていましたが、治療教育部門の責任者になり、自閉性精神病質の子どもに興味を持つようになりました。その間、第二次世界大戦前にドイツとオーストリアが民衆歓迎の中、合併しました。その後、「自閉性精神病質」の論文を発表するのですが、アンス・アスペルガーはナチスの優性政策や安楽死に関わる問題にかなり配慮して、「自閉性精神病質」の子ども達が決してそのようなガス室おくりの対象にならないように切々と訴えかける歴史についてはあまり知られていません。社会的に問題を起こすも知的には優れた精神病質であって精神病ではないこと、こだわりを生かせて有能さを発揮できれば就労可能であることを強調していたようです。しかし、アスペルガーと同じ年に論文「幼児早期自閉症」を発表したカナー(Kanner)からは生涯無視され続けました。それは、カナーがユダヤ人であり、ナチスに母親と同胞を殺された歴史があり、ナチスドイツのギャラリーであったハンス・アスペルガーに嫌悪感をもっていたと言われています。実際、ユダヤ人が多くいる英米の自閉症研究者・臨床家はその後もアスペルガーについては全く取り上げませんでした。この呪縛から取れて、晴れてウィングが「アスペルガー症候群」を取り上げたのは、ハンス・アスペルガーが死去してからすでに10年足らずがたっていました。何気なく使っている「アスペルガー」ですが、実はこのような歴史があったのです。
今の現状をハンス・アスペルガーはどう思うのでしょうか?何か皮肉めいたものを感じてしまいます。

夜更かしの現状と問題点

24時間営業のコンビニや託児所を設けて深夜営業に励む居酒屋に幼児の姿を見かけることも珍しくなくなりました。2002年の全国調査では、3歳児の過半数は夜10時をすぎても起きている、また、2003年には小学6年生の6%、中学3年生の66%の就床時刻は午前0時過ぎとなり、小学生の訴えのベスト3は、あくびが出る(62%)、眠い(58%)、横になりたい(47%)、となっていました。
IP08_A40.JPG 生体時計の周期は24時間より長く、年齢に関係なく朝寝坊や夜更かしの方が楽にできます。外で遊びの場が喪失し、ゲームを含むメディアが普及した現代では、かつてないほどきちんと寝るための工夫が必要です。昨今ではTシャツ、ジャージのままで寝る子どもも多い状態です。「寝間着に着替える」「翌朝に衣類をそろえて枕元に置く」などは昔からの「入眠儀式」でした。実はこのような儀式は重要なのです。親はその子どもにあわせた入眠儀式の習慣化に力を注ぐことが必要です。
また、朝、太陽の光を浴びて起きることも重要です。24時間周期の地球で生きる動物であるヒトは、眠り、朝の光を浴び、体内時計をリセットすることで日中の活動をすることができます。朝起きるときに、カーテンを開けて太陽の光を浴びるという当たり前の生活を見直しましょう。
睡眠不足は、各地の教育大学の研究からも学業成績に大きな影響を与える実地調査の研究報告が多くされています。睡眠不足から来るセロトニン活性の低下でイライラ感、攻撃性の増加といった感情制御の問題も起きてきます。
寝ている時間は何もしないから少なくしてしまうというような、睡眠をないがしろにする行動はできるだけ慎み、十分睡眠をとって充実した生活を送りましょう。

寝ないと太る!

IP08_B38.JPG シカゴ大学の研究結果から、睡眠時間が減ると、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の危険が高まると示唆されている。これに加え、最近では様々な生活習慣病の現況である肥満と睡眠との関連がクローズアップされています。(Spiegel K, Leproult R, Van Cauter E:Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function.Lancet. 1999 Oct 23;354(9188):1435-9.)
睡眠時間が減ると朝のインスリン分泌が悪くなり、血糖値が上昇し、交感神経系の活動が高まり、コルチコステロンが夕方になっても減少しにくくなります。また、睡眠時間を減らすと老化を促進することもはっきりしました。太る成因としては、レプチンの低下やグレリンの上昇も含め、「夜更かし→慢性の時差ぼけ→体調不良→日中の運動量低下→肥満」が想定されています。

ADHDのペアレント・トレーニング

親はADHDの子どもに「してほしくない行動」を目にすると怒りやイライラがつのり、ストレスを抱えます。また子どもも絶えず怒られる中でストレスを抱えることでしょう。単なる悪循環の繰り返しになってしまうことは少なくありません。
IP08_A36.JPG ペアレントトレーニングは、ストレスや深刻な悩みを抱える家族を支援する方法の一つとして、ハンス・ミラー博士によって1974年に開始されました。
ポイントは、以下になります。
行動の分類化
 できるようになって欲しい行動とやめてほしい行動を行動観察記録をとって分析する
注目と無視
 できるようになった行動はほめ、望ましくない行動は無視
トークンシステム
 できるようになってほしい行動を強化するために、子どもが見事にすることができたら子どもが好きなものや喜ぶもの、満足するもの、例えば御菓子を与えたり抱きしめたりする(これを強化子という)。しかし、御菓子ばかりあげていたり、抱きしめてばかりいては親の方も対応に困るときがある。トークンとは、それ自体では価値はないが、価値のある実際の強化子と交換できる代用貨幣(グリーンスタンプ、ベルマークなど)のことをいい、これらを使って、うまく子どもに伝えていく
タイムアウト
 ADHDの子どもは注意散漫さ・衝動性がみられるため、長時間うまくいかない状態を延々とやっていても行動は修正されるどころか、かえって悪化をしてしまう。子どもが興奮して手がつけられなくなったとき頭を冷やす意味でも、親がその場から立ち去るなどの行動で時間設定をする
以上のようなことは、親御さんが一人でやっていくことはかなり難しいことです。自分の子どもに対してはどうしても感情的になるのはどんな親御さんもあって当然です。専門家と一緒に考えながら、計画的に行っていくことをお勧めします。

時代文化を示すうつ病-メランコリーとディスチミア-

IP08_B36.JPG 1980年代後半以降に職場の共同体的雰囲気が失われていき、さらに、職務境界の設定の曖昧さがある日本的職場という特徴から、メランコリー親和型者が際限ない仕事の負担を背負うことになって、過労死・過労自殺に追い込まれやすいのではないかと大野正和は考察していました(「過労死・過労自殺の心理と職場」青土社)。そして、臨床現場からは、1980年代からうつ病の病前性格としてのメランコリー親和型あるいは執着気質よりも、より若年期発症の軽症で遷延化傾向のあるディスチミア親和型(樽味)へと変化してきていると言われています。メランコリアは自責の病であり、ディスチミアは他罰感情に根ざしています。
高度経済成長の時の日本は、国民全体で経済を発展させていこうという気運が中心でしたが、小泉政権以降の自由資本主義経済では、堂々と個人の利益を追求することは当然のことという雰囲気が強くなりました。ライブドアの堀江社長がその典型でしょう。生きる価値観が個人主義的なアメリカ的価値観に大きく変わることで、規範・規則を押しつけられる職場におかれて、他罰的な気分変調を起こす現象が広がるのも当然のものかもしれません。
ここで重要なのは、そのようなディスチミア親和型うつ病といわれている人でも中には治療に反応するうつ病(例えば双極性うつ病など)の方がいることです。時として、偉い先生から、物事が思うとおりにいかないのは「うつ病」のせいではなく、未熟な人格に問題があるのだと気づくことが治療として必要、と言われたりすることがあるようですが、ディスチミア親和型うつ病というレッテルを貼ることより、決してあきらめずに根気強く治療をしていくことが重要です。

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