うつ病

うつ病は、非常に多い病気で、米国では女性の 4 人にひとりが、生涯のうちにこの病気になると報告されています。
きちんとした治療を受ければ、必ず短期間で治る病気ですが、問題としては、うつ病の人の半分以上が治療を受けていないということです。

1,症状

 風邪を引いたら、熱が出て、頭が痛くなり、盲腸になったらお腹が痛くなります。人のからだは病気になると何らかの症状が現れてきます。うつ病でもこれと同じようにさまざまな症状が現れるのです。ただし、うつ病が他の病気と違うところは、こころとからだの両方に症状が出ることです。

「憂うつだ」、「悲しい」、「何の希望もない」、「落ち込んでいる」というような感情です。このような症状が午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善してくるという“日内変動”があるのもうつ病の特徴の1つです。( 正常反応としての「憂うつ」と病的な「うつ状態」の違いについてはこちらをクリックうつ病と更年期障害のちがいはこちらをクリック

  • 今まで好きだったことにも打ち込めなくなる
  • 新聞を読む、テレビなどを見る気がしなくなる
  • 仕事への意欲が低下する
  • 何をするにもおっくうになる
  • 物事の判断がにぶくなる
  • 自分に自信がなくなる
  • 自分を責める
  • 些細なことから不安に陥りやすい、カッとなりやすい

うつ病の症状は、体にも影響します。例えば、早朝覚醒、食欲低下、月経不順、頭重、肩こりなど。体の不調を感じて、検査を受けても何の異常もない場合は、うつ病の可能性が考えられます。

2,成因

私たちの日常生活にはさまざまなストレスが待ち構えています。
「肉親の突然死」、「別居や離婚」といった悲しい出来事から、「昇進」、「出産」などといった一見喜ばしい出来事でも人によってはストレスになることもあります。そして、これらからうつ病が発症する可能性があります。しかし、うつ病になった原因がはっきりしている場合、比較的治りやすいといわれています。
神経伝達物質の中で、脳からこころに元気を伝える物質が“セロトニン”と“ノルアドレナリン”です。これらは気分や意欲、食欲、記憶などを神経に伝達します。脳内の神経細胞から、セロトニンやノルアドレナリンが放出されると、受け手である神経細胞の受容体に結合して、情報を伝達します。

何らかの理由でこのセロトニンやノルアドレナリンが減ると、気持ちの活性化が伝えられずに憂うつ感などを引き起こしてうつ病になると考えられています。

3,診断

うつ病の診断の中心は問診で、病歴などを聴取してうつ病の原因を探します。
精神科で医師が患者にする質問としては以下のようなものがあります。

  • どんな症状があるのか
  • いつごろから症状が現れてきたか
  • 症状が現れてきてから、今までどのように変化したか
  • 何がきっかけだと思うか
  • 身のまわりで、最近何か大きな変化や事件が起こらなかったか
  • 仕事の内容や人間関係など、日常生活でストレスを感じているか
  • 家族の構成と関係
  • 生まれ育った環境や学歴・職歴
  • どんな性格か
  • ほかの病気にかかっているか
  • のんでいるくすりはあるか
  • 酒、タバコの量は1日どれくらいか  など

4,治療

うつ病は、治療を受ければ必ず治る病気で、適切な治療を早期に行えば、一般的に、6カ月から1年ほどで回復してきます。

治療の基本は、薬物療法と十分な休息をとることです。

薬物療法

現在、うつ病の状態というのは、「脳の神経伝達機能に変調をきたした状態」と考えられています。ですので、この変調を改善するために、抗うつ薬が用いられます。抗うつ薬は、減少している神経伝達物質の量を正常に近い状態に戻します。
重要なことは、医師の処方を守る、ということです。
ただでさえ自分の判断能力が激減する「うつ状態」ですから、処方された薬を勝手に体調が良くないから半分にしよう、とか服用を止めてしまったり、ということは避けましょう。

脳内物質に働きかける薬を飲んでいるのですから、なお更です。

薬を飲んですぐに効果が出るというわけでもありませんので、そこも注意したいポイントです。また、その薬が当人に合うかどうかも、少しの期間飲んでみなければ分からない、ということもあります。医師を信頼し、悩み事と体調をしっかり伝えて治療に当たることが必要となります。

ごくまれにですが、薬が合わない場合、副作用に見舞われるばあいがあります。眠気、吐き気、頭痛、ふるえなどです。その際は遠慮なく医師に伝えましょう。その時は薬を他の薬に切り替えていきます。「うつ病の治療はいつまでするのか」はココをクリック

休養環境を作る

うつ病の患者さんは、もともとまじめで責任感が強い人が多いので、「仕事を休むなんてできない」、「自分が仕事を休んだりしたら、ほかの人に迷惑がかかる」と休養することをためらったり、拒んだりすることがよくあります。

まず、こころとからだをゆっくり休めて、疲れを癒すことが一番の治療であることを理解することが重要です。回復するまでに、ある程度の時間がかかりますが、必ず治りますので、ゆったりとリラックスできるものをみつけ、治療に専念できる環境をつくりましょう。うつ病の患者をもつ家族へののアドバイスはこちらをクリック

自分ではどうにも環境がつくれないなら、医師に相談したり、家族や職場の仲間の協力を求めたり、入院を考えてみてはどうでしょうか。気軽にご相談ください。

パニック障害

 パニック障害は実は、それほどめずらしい病気ではなく、アメリカでは100人に3人の割合で発症しており、日本でもほぼ同率の患者さんがいると考えられています。今後、パニック障害に対する認識と理解が深まってくれば、患者数はさらに多くなると考えられています。

パニック障害は治療を受けないで放っておくと慢性化する場合がありますが、早めに治療を行えば必ず治る病気です。
決して特別な病気でもありません。

1,症状

パニック障害には「パニック発作」・「予期不安」・「広場恐怖」という3つの特徴的な症候があります。
パニック発作には以下の表のような症状がみられます。
パニック発作ではこれらの症状が何の前ぶれもなく突然起こり、多くの場合10分以内でピークに達し、通常30分以内でおさまります。

  1. 胸がドキドキする
  2. 冷汗をかく
  3. 身体や手足の震え
  4. 呼吸が早くなる、息苦しい
  5. 息が詰まる
  6. 胸の痛みや不快感
  7. 吐き気、腹部の嫌な感じ
  8. めまい、頭が軽くなる、ふらつき
  9. 非現実感、自分が自分でない感じ
  10. おかしくなってしまう、狂うという心配
  11. 死の恐怖
  12. しびれやうずき感
  13. 寒気または、ほてり

予期不安とは、パニック発作を一度経験して、あの恐ろしい発作がまた起きるのではないかという不安感が生じることです。パニック発作にはこの予期不安が必ず伴い、発作を繰り返すごとにこの不安がさらに強くなっていき症状を悪化させていきます。
広場恐怖とは、「広場」を恐がるという意味ではなく、パニック発作を経験した人が“特定の場所や状況”を避けるようになることです。

発作が起きたときにすぐに助けを求められなかったり、逃げ出せないような場所を避けるようになります。
例えば

  • 電車やバス(特に急行など停車間隔の長いもの)
  • 人ごみ
  • 地下道
  • 高速道路、高架橋(車の運転の場合)
  • 美容院、歯科
  • 屋外

などです。

過去にパニック発作の起きた場所で、もう一度そこへ行くと発作が起きるのではないかと思い、このような場所を避けるようになります。

2,治療

パニック障害と診断されたら、完治に向けて治療がすすめられます。薬を使って発作を抑える薬物療法と、カウンセラーが行う精神的な方面での治療になります。根本的な治療は精神療法になります。

薬物療法

パニック障害の治療に使われる薬は、「SSRI」「抗不安薬」「三環系抗うつ薬」「その他」の薬に分けられます。患者それぞれの症状に合わせて処方されますが、最低3ヶ月の服用が必要になります。それで効果が見られても、そこから更に1年~1年半の薬の服用が必要になってきます。「パニック障害の薬物療法は安全か?」はこちらをクリック

認知行動療法

パニック障害は心の病気ですので薬で症状を抑えても、精神的な面を改善しなければ根本的な治療はできません。精神的・心理的な面をクリアして初めてパニック障害を克服したと言えるのです。
認知行動療法とは、恐怖心や不安感を取り除く治療法です。パニック障害の患者は、外出先でのパニック発作を恐れて、広場恐怖を覚える人がほとんどです。一度電車の中でパニック発作を起こしたり、エレベーターの中で発作を起こした経験のある人は、その場所で再び発作が起るのではないかという恐怖感や不安感を抱き、二度と行きたくないと避ける傾向があります。これを回避行動と言います。認知療法はパニック発作と自分の身の回りの状況や体の感覚が、パニック発作を起こすのにどう関係しているのかを理解するところにあります。そしてその回避行動をコントロールするためにはどのようにすればいいのかを自身でしっかりと把握して学ぶことを目的としています。そのコントロールの練習や、回避行動が見られる場所での対処法を習得していきます。自分が不安に思ったり、恐怖を感じる場所でも、うろたえたりせずに安心してその場にいることができるということを目標にし、その場にいても不安を解消できるようになるよう、治療していくものです。「パニック障害の認知行動療法」はこちらをクリック

3,治療のコツ

カフェインは、パニック発作を誘発することがわかっていますので、コーヒーはカフェインが入っていないものを飲むことが大切です。また、アルコール・ニコチンの摂取は直後は良いもののそれが抜けるときに不安が惹起されますので注意が必要です。また、「疲れ」「風邪」「寝不足」はパニック発作を惹起させるリスク因子ですので、そのようなことにならないように日常生活を送ることも治療の大きな柱になります。
パニック障害は自分一人で治せるものではありません。医師と二人三脚するつもりで向き合いましょう。最終的に病気を克服するのは自分ですが、医師やカウンセラーの指示もとても大事です。処方された薬を勝手にやめてしまうと、治療前よりも状態が悪くなる場合があります。完治するまでは、途中で通院をやめるようなことはしないよう、最後までしっかりと、自分は病気を治すんだという意志を強く持って治療に望みましょう。「パニック障害の治療法とその終焉」はこちらをクリック

社会不安障害

他人に悪い評価を受けることや、人目を浴びる行動への不安により強い苦痛を感じたり、身体症状が現れ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたすことを、社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)といいます。

この社会不安障害(SAD)は性格の問題ではなく、精神療法や薬物療法によって症状が改善することがある心の病です。ちょっと恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、社会不安障害(SAD)の人は、恥ずかしいと感じる場面では常に羞恥心や笑い者にされるのではという不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。

思春期前から成人早期にかけて発症することが多いこの病気は、慢性的になり、人前に出ることを恐れるようになると、「うつ病」等のさらなる精神疾患の引き金となることもあります。日本国内に推定で約300万人以上の患者さん*がいると言われており、現代社会では多くの患者さんを抱える一般的な病気です。この病気にかかるのは決して特別な人ではなく、現在も海外では多くの患者さんが医療機関での治療を受けています。

1,症状

社会不安障害(SAD)が発生しやすい状況には次のようなものが報告されています。

社会的状況

  • 権威ある人と面談する
  • 人前での行為や会話
  • 知らない人との会話
  • 会議で意見を言う
  • 試験を受ける
  • 誰かを誘おうとする
  • パーティーを主催する

生理的状況

  • 人前でお腹がなる(なりそうになる)
  • 人前でおならが出る(出そうになる)
  • 自宅外でトイレへ行かなければならない

社会不安障害(SAD)では、強い不安症状が自律神経に作用し、さまざまな身体症状を発症することがあります。比較的、頻繁に見られる症状は以下のようなものです。

  • 顔が赤くほてる
  • 脈が速くなり、息苦しくなる
  • 汗をかく
  • 手足、全身、声の震え
  • 吐き気がする
  • 口が渇く
  • トイレが近くなる、または尿が出なくなる
  • めまいがする
  • パニック発作

2,治療

社会不安障害(SAD)の治療法には大きく二つ、薬を用いて治療する「薬物療法」と薬物を用いず心理的に治療する「精神療法」があります。二つの治療法は単独で行われたり、併用して行われます。

薬物療法

SSRI ベンゾジアゼピン系
抗不安薬
β遮断薬
神経細胞間のセロトニンの量のバランスを保つ薬で1年以上の継続的な服用が必要です。第一選択で用いられるケースが多い薬剤です。 即効性が高い薬で頓用として用いられることが多くあります。 高血圧の治療に用いるお薬です。不安を感じる場面が1つか2つに限られているタイプ(非全般型)に頓用で用いることがあります。

精神療法

認知療法 行動療法 森田療法
不安がなぜ発生するのかのメカニズムについて学習し、あやまった認知パターンを修正する訓練を行います。 不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、刺激に身を曝す「曝露療法<エクスポージャー>」を行います。 不安を無理に除こうとせず、不安の裏にある、よりよく生きたいという欲望を建設的な行動につなげて、症状へのとらわれから脱するよう援助します。

3,治療のコツ

医療機関での受診を始めた方は症状が少しおさまってくると、「楽になった」「副作用が恐いから」との理由で、自己判断によって薬の服用をやめてしまうことがあります。しかし、こうしたことは病気の回復の妨げとなるばかりか、症状の再発や「うつ病」等のさらなる病気の呼び水となりかねません。医師の指示に従ってきちんと薬を飲むように、周囲の人がサポートをしてあげましょう。
また、周囲の人はSADに悩む患者さんがプレッシャーを感じずに社会生活を送れるように、家族であれば「話を聞いてあげる」「休日の行動を無理強いしない」、学校や会社の友人であれば、「朝礼時等に人前で話をさせない」「食事の同席を強要しない」等、患者さんが負担に感じる状況を作り出さないようにしてあげてください。

強迫性障害

強迫性障害とは、不快な考えが頭に何度も浮かぶため、その不安を振り払う目的から同じ行動をくり返してしまう病気です。手を何度も洗わずにはいられないとか、戸締まりを何度も確認しなくては気がすまないなど、誰でもたまには経験する行動なのですが、それが習慣的かつ非常にエスカレートして生活に支障をきたすほどの状態が強迫性障害です。そして、患者さんが自分の不快な考えについて「こだわりすぎだ」と判断できるにも関わらず、こだわらずにいられないことが特徴です。

強迫性障害は英語でObsessive Compulsive Disorderというため、その頭文字をとってOCDと言われています。

1,症状

こだわりの考えを医学用語では「強迫観念」、こだわりに関する不安を振り払おうとしてくり返す行動を「強迫行為」といいます。

強迫性障害は患者さんによってこだわる内容は様々に異なります。けれども、共通していることがあります。それは冒頭にも述べたように、患者さん自身が少なくともある時点で「心配しすぎだ」「無意味だ」「周りの人からみたら、ばかばかしいことを悩んでいると思われてしまうだろう」などと感じていることです。これを「不合理性の認識」「自我違和感」といい、強迫性障害を診断するときの重要なポイントの一つになります。

稀な病気ではなく、一般人口の1.3~2%に認められるといわれています。人口の2%として計算すると、日本でも約250万人もの患者さんがいることになります。
また、強迫性障害の患者さんが治療を受けることでどれくらいよくなったかというデータもありますので、参考までに補足しておくと、適切な治療を受けた強迫性障害の患者さんのうち約1/4の人は著明に改善し、残りの1/2の人もある程度改善したと報告されています。
強迫性障害は治りにくいというイメージがあるようですが、適切な治療を継続すれば症状が改善される病気なのです。自分の行為に「あれ、これって少しやりすぎてない・・・?」と疑問を感じているにも関わらず、行為が次第にエスカレートしていくような場合には、そのままにせず、一度医療機関を受診して、専門医に相談することをお勧めします。

社会不安障害(SAD)では、強い不安症状が自律神経に作用し、さまざまな身体症状を発症することがあります。比較的、頻繁に見られる症状は以下のようなものです。

2,原因

強迫性障害の要因として、脳の一部(大脳基底核領域)における機能異常が指摘され始め、その機能異常には脳内神経伝達物質の1つである“セロトニン”が関与しているのではないかという仮説が立てられるようになりました。
この仮説では、私たちの脳の中には、「汚れを避ける」や「安全を確認する」といった情報をコントロールする部分があり、この部分に異常が起き、情報のコントロールが不能になったときに、強迫性障害のさまざまな症状が現れるのではないかと考えられています。そして、その情報のコントロールのために重要な役割を果たしているのが、神経伝達物質のセロトニンであると言われています。セロトニンは脳内の情報を神経細胞から神経細胞へ伝達する役割を担っているのですが、強迫性障害の場合、神経細胞から放出されるセロトニンの働きに何らかの問題が生じて、十分な情報の伝達が行なわれず、脳の強迫性障害に関わる部分での機能異常が生じると考えられています。

3,治療

強迫性障害の治療において重要なことは、まず、この病気について正しく理解することです。強迫性障害による強迫観念や強迫行為は性格や性質だからしかたがない、というものではありません。適切な治療を早期に開始すればよくなることが多いと言われています。
また、強迫性障害は症状が多様であり見分けにくい疾患であるため、専門医を受診して正しい診断を受けることが大切です。
強迫性障害の治療は「薬物療法」と「認知行動療法」の2つを中心として行われます。

薬物療法

 強迫性障害の治療のためのくすりには、強迫性障害の原因の1つと考えられている脳内のセロトニン系の異常を調整する働きを持つものを使用します。
セロトニン系の異常を調整するくすりの中でもSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、脳内神経伝達物質のうちのセロトニン系だけに選択的に作用して、神経終末のセロトニンを正常に近い状態に調整します。

特に強迫性障害のくすりは効き目が現れるまでに時間がかかります。長い場合には、2カ月くらい同じくすりをのみ続けて効果が現れることもあるため、自己判断で「このくすりは効かない」と止めてはいけません。このようなことは、症状を悪化させたり、治療を長引かせる原因にもなります。副作用を認めた場合にも、すぐに医師に相談して対策方法を聞くようにしましょう。強迫性障害は、焦らずゆっくり取り組めばよくなることが多いと言われています。

医師の指示通りに、ゆとりを持って治療に取り組むことが大切です。

認知行動療法

 強迫性障害の治療は、必ずしもくすりさえ服用していればよくなるというわけではありません。
薬物療法に併用して、認知行動療法を行う必要がある場合があります。薬物療法を行わずに認知行動療法だけで治療できる場合もあります。認知行動療法は、認知療法と行動療法を組み合わせたものです。

一般的な方法としては、行動療法では、患者さんが強迫行動を引き起こすような状況に直面したときに、不安が自然に鎮まるまで強迫行動をしないでまてるようにします。認知療法では、病気を重くする悪循環の原因となっている病的な不安の仕組みをよく理解して、行動療法に安心してとり組むように援助します。また強迫観念を強化しやすい思考パターンが習慣になっていないかなどを検討します。

4,治療のコツ

 強迫性障害の治療を行なう上で最も重要なことは、その日、その日の強迫観念や不安の変化に一喜一憂しすぎないことです。症状には波があり、よくなったり悪くなったりをくり返しながら、全体的にはよい方向に向かっていきます。環境の変化やライフイベントによっても症状は大きく変化するものですが、一つ一つ波を乗り越えていくことで治療は進んでいくのです。したがって、症状が少し悪くなったからといって、焦って病院を変えたりすることはかえって逆効果です。

また、くすりの服用についても、安易に自己判断しないようにしましょう。強迫性障害の薬物療法では、くすりを徐々に増量していくことが一般的です。くすりの効き目が現れるには何日も、ときには何カ月もかかる場合があります。そして症状がよくなってもある程度の期間は服用を続ける必要があり、その後くすりを減らす場合には一度に中止せずに、徐々に減量していきます。必ず医師と相談しながら、くすりを服用しましょう。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、大腸や小腸に原因となる異常が見つからないのに、便通異常と腹部症状が続く病気です。主な症状は腹痛、腹部不快感や下痢、便秘などの便通異常です。

1,症状出現の特徴と分類

特徴

  • 症状は、仕事が忙しいときに出る
  • 症状は、通勤や通学の途中(電車に乗っている時など)に出る
  • 休日はなんともない
  • おなかが痛いのは昼間だけ。寝ている間は痛くならない
  • 最近、職場の異動、転校、転職、引っ越し、結婚など、生活上の大きな変化があった
  • 試験や会議の前あるいは最中など緊張する場面で、症状が悪化する
  • 映画を観たり、長距離ドライブなどトイレのない場所に出かけたりするのが不安だ
  • 旅行や出張先で、きまっておなかの調子が悪くなる
  • 気分の落ち込み、不眠、頭痛、肩こりなどがある

分類

  1. 下痢型
    しょっちゅうおなかが痛くなり、下痢をする
    【例】
    ・緊張すると、おなかが痛くなって下痢をする
    ・電車に乗ると、おなかが痛くなって、何度も途中下車してトイレにかけ込む
  2. 便秘型
    便秘が続き、排便の前におなかが苦しくなることが多い。
    【例】
    ・何日も排便がなく、うさぎの糞のようなコロコロとした固い便しか出ない
  3. 混合型
    下痢と便秘を交互にくり返す人もいます。
    下痢や便秘などの症状が1か月以上続いていて、ほかに原因となる病気がない方は、過敏性腸症候群(IBS)の可能性が考えられます。

2,原因

  1. ストレス:身体的・精神的ストレスによって自律神経のバランスがくずれて起こる
  2. 腸管運動機能異常:腸の動きが過剰になってけいれんし、腹痛や便通異常が起こる
  3. 内臓知覚過敏:腸にわずかな刺激が加わっても、それを過敏に「痛み」と感じてしまうために腹痛や便通異常が起こる
  4. 炎症:急性腸炎のあと、完全に治りきっていないため、腸炎と似た症状(下痢と腹痛)が起こるとする説(最近、こう考える研究者が出てきました)

3,治療

食生活指導

 基本的には、3食きちんと食事をとり、ゆっくりと食べる習慣をつけることです。夜食などは厳禁です。また、食べるものも良いもの、悪いものがあるので指導していきます。

薬物療法

 第一段階として、過敏性腸症候群に効果のある便通を整える薬が使われます。「セレキノン」「ポリフル」「イリボー」などが代表的です。

第2段階として、改善しなかった下痢や便秘に対しての対症療法的な薬物療法が開始されます。下痢であれば「ロペミン」、腹痛であれば平滑筋の収縮を抑制し、下痢や腹痛を和らげる抗コリン薬であるチキジウム、メペンゾラート などを使います。
第3段階として、精神的な部分に作用する抗不安薬や抗うつ薬などを適切に使っていきます。

4,治療のコツ

 心療内科や精神科では、下痢止めや腸のケイレンを止める薬など、対症療法的な薬だけでなく、必要ならば抗不安薬、抗うつ薬を処方して、精神的な苦痛を和らげる方法も一緒に考えます。
腸と脳は、『脳腸相関』といって、密接な関係があります。というのも、腸には脳と同じ神経が多く分布し、それらは自律神経でつながっているからです。脳が感じた不安やプレッシャーなどのストレスは、自律神経を介して腸に伝わり、運動異常を引き起こします。また、下痢や便秘などの腸の不調も、自律神経を介して脳にストレスを与えます。つまり、脳腸相関によって、ストレスの悪循環が形成されるのです。過敏性腸症候群の場合は、特に腸が敏感になっていますから、ちょっとしたストレスにも反応します。また、少しの腹痛でも脳は敏感にキャッチし、不安も症状も増幅していきます。実際、何年も思い悩んでいた症状が、精神的な薬の服用で、治ってしまうケースも見られますので、怖がらずに受診してみてください。